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讃岐うどんブーム・問題点等

讃岐うどんブーム

有名店の行列(香川県内)香川県農政水産部の見解によれば、20世紀後半から21世紀初頭にかけて下記のように4回の讃岐うどんブームが起きている。なお、これは必ずしも統一された見解ではなく、第3次と第4次を連続したブームと捉える意見などもある。いずれも終息時期は判定が困難で特定されていないため、発生したとされる年を示す。

第1次:1969年
宇高連絡船デッキ上の立ち食いうどん店の独特の雰囲気や、大阪万博への出店や金子正則知事によるトップセールスが評価された。また、香川県はPRのために当時キャラバン隊を組織していた。
第2次:1988年
瀬戸大橋の開通を受けて四国全体の観光客が増加し、讃岐うどん店への来店客も増加した。一方で、バブル景気の時期であった事などから一部の店が値段を高騰させて問題が生じた。また、冷凍うどんが商品化されたことで、全国のスーパーマーケットなどで讃岐うどんが広く販売されるようになった。
第3次:1995年
『恐るべきさぬきうどん』などの影響による香川県内でうどん店を巡る客の増加や、それを受けた1990年代前半のマスコミへの露出により、讃岐うどんを目的とする観光客が急激に増加していった。
第4次:2002年
首都圏など香川県外へのセルフ式うどん店の出店増加により、讃岐うどんを認知し、実際に食べる機会が日本全国で増えた。
一方で、讃岐うどんブームの弊害として「迷惑駐車の増加」「水質環境汚染」が挙げられる。

業態

本節では、ある程度認知されている讃岐うどんの食べ方や業態について説明する。
一般店
完成した料理を店員が上げ下げしてくれる、全国で一般的な飲食店の形態のうどん専門店。香川県内においても最も数が多い。メニューには各種の具入りうどんや副食品の類が並んでおり、量や薬味の加減を店員に頼める点も香川県内外で共通している。
香川県内の一般店で特徴的なのは、おにぎり、おでんなどの作り置きのできる副食品は、一般店であっても大抵セルフサービスであるという点である。客は店に入ってすぐにそれらを取ってきて、食べながらうどんが出てくるのを待つ。なお、一般店のメニューは県外の一般的なうどん店と大きく異なることはない。
セルフサービス店
料理の受け取り、食後の食器の返却を客自ら行う、セルフサービスの業態をとるうどん専門店。セルフうどん店では、うどんとだしと具(トッピング)を別々に選ぶ店が多い。
具はさまざまな種類の天ぷらを用意している店が多い。具を必ずしもうどんに乗せて食べる人ばかりではなく、自由な食べ方で楽しまれている。
香川県内のセルフうどん店は、そのほかにも客の側で様々なことを行うようになっている店が少なくない。
冷水で〆め蒸篭に並べられたうどん玉を客が好みの量を玉単位で丼に取り分ける。
湯と「てぼ」(鉄砲ざる)または「ぬくめいかき」(竹製の道具)が用意されていて、自分で好みの温度まで温める。冷たいうどんそのままも可能。
置かれている具や薬味を自分で取って入れる。
タンクの蛇口を捻ってだし(つゆ)を注ぐ。だしは温冷の双方が選べる。冷たいうどんに熱いだしをかけたり、その逆なども行われている。また、かけだしのほかにぶっかけだし、つけだしが用意されていたり、醤油、調味醤油などを少しかけるだけで賞味されることもある。
上記は一例であるが店と客の役割分担が店によって違うこともままあり、香川県民でさえはじめて入るセルフ店ではまごつくことがあるため、メニューではなく手順が掲示されている場合も多い。
長らくこのようなセルフうどん店は香川県や岡山県などの限られた地域独特の業態だったが、2002年頃よりセルフ式うどんのチェーン店が県外へ出店し、短期間に急増した。香川県で標準的なセルフうどん店よりも客自ら行なう手順は少なくなっており、セルフうどん店がはじめての客にも入りやすい工夫がされている。
製麺所
製麺所に什器を設け食事ができるようにしたうどん店であり、基本的にセルフサービスである。食べ方などは基本的にセルフうどん店と同様であるが、選べるものは極端に少なく、メニューなども用意されていない場合が多い。
看板や暖簾、什器などに気を使わず、とても客商売をしているようには思えないたたずまいの店が少なくなく、このような店が紹介された当初、他県民には大変ユニークに映ったが、香川県民でも知らない人は本当に知らなかった。
小売
外食としてだけではなく家庭でもうどんはよく消費される。外食店が今のように増加する前は、うどんは買ってくるか手作りするのが主流であった。
玉売り
調理済みのうどん玉の形で販売されるもの。家庭では湯通しして(湯掻いて)利用される。製麺所などで蒸篭から取り分け販売されるほかに、袋詰めにしてスーパーマーケットなどでも販売される。
冷凍うどん
工場生産の冷凍食品。コシが強いのが特徴で、工場の生産工程にて茹でた直後に冷凍するため水の分散状態が保たれることや、足踏み製法など讃岐うどん職人が行う工程と同じ効果を持つ製造方法を工場の生産過程に取り入れる、タピオカの原料になるキャッサバの使用など、各商品によって様々な工夫を行っていることにより生み出されている。指定の時間茹でて水洗いしてから利用するものが多い。保存が利きまた近年改良が進んで味の評価が高まってきたため、全国的に家庭での利用の主流になりつつある。香川県内のメーカーのほか、各地の大手食品メーカーも手がけている。
生、半生茹でる前の、生地を伸ばして切った状態で販売されるもの。水分量を調節するなどして乾麺に近い状態にし、常温である程度の保存が可能なものもあり、半生と呼ばれる。指定の時間茹でて水洗いしてから利用する。土産物としてよく販売されている。
乾麺
茹でる前の生地を伸ばした状態で、天日干しに近い環境で乾燥させて販売されるもの。保存に優れ、全国のスーパーマーケットで販売されている。

食感・製法・原料

コシについて
讃岐うどんは日本全国すべてのうどんの中で特別にコシが強いわけではない。コシという言葉はそれを使う人によって、硬さや弾力、または粘度であったりと、言葉の定義が必ずしも共有されていないが、讃岐うどんの味の評価は、この麺のコシの強さによってなされる部分が大きい。讃岐うどんにおいては、店やメニューの紹介ではだしや具の味、たたずまいなどが取り上げられても、麺の評価がそれ以外の要素の評価よりも上位に位置する場合もある。一方、かつては製麺所から麺を仕入れる店が多かったため、むしろだしが店ごとの個性として重視されていた。
うどんのコシについての学術的研究では、コシは「咀嚼中の総合的な食感」というテクスチャーをもって表現されている。調査によれば、弾性率と粘性率がそれぞれ1×105Pa、1.5×108Pa・s以下と軟らかく、かつ破断強度が大きいうどんが、コシがあって美味しいと評価されている。すなわち、噛み切るのに力が必要だが軟らかいのがコシのあるうどんであり、単純に硬いだけではコシがあるとはみなされない。
コシのもうひとつの特徴は、それが「時間とともに急速に失われていく」ということである。これはうどんの破断強度が2時間で約2/3まで低下することからもわかる。讃岐うどんのコシ(ないし美味しさ)は、茹でて水で締めたその瞬間に最大となって分単位で失われる。これは時間がたつとともに水分分布が均一化して全体が糊化(アルファ化)し、噛み始めが硬くなる一方で噛み切るのに必要な力は減少し、コシがなくなっていくためである。このため、店で食べる讃岐うどんの当たり外れは店に入るタイミングが全て、とも評される。讃岐うどんには時間とともに出現するような類の美味さは一般に存在しないが、茹でおきを提供する店もある。
手打ち式製法・足踏み製法
上記のようなコシが生まれる原因として、讃岐うどん特有の手打ち式製法があげられる。これには一般的な機械式の製麺と比べて
十分な混捏
圧延が多方向
生地の熟成
といった特徴がある。この中で1と2は生地の中のグルテンの分布を均一にする効果があり、3には生地からの脱気や遊離脂質の減少と結合脂質の増加をうながす効果がある。3には1によって生地に生じた応力を緩和し、軟らかく伸びるようにする効用もある。
また、食塩水の添加も重要な要素となっている。加える水の量を増やすことによってグルテンの均一性を増す事ができるが、多すぎると生地の粘弾性が増して硬くなる。また食塩を加えることで生地の伸びがよくなるが、多すぎると逆に低下する。このため食塩水の量と濃度を調節することが重要であり、古くから「土三寒六常五杯」(土用など夏期は1杯の塩に対して水を3杯加え、寒中の冬期は水を6杯にする)という言葉が目安にされてきた。これらの要素が組み合わさって讃岐うどんのコシは得られている。
生地はうどんゴザをかぶせた上から裸足の足裏で踏みつけて腰を出す「足踏み」製法がかつての主流であったが、衛生面から戦後この方法の是非が問題となった。このため効率化を兼ねて、製塩業に用いていた藁の加工機をベースに混捏用の機械が1965年に開発された。1968年に香川県が製麺業の免許の交付・更新の際にこの機械の採用を義務付けたため普及が進み、1970年には北海道など全国各地やソウル、アラスカなど日本国外にも出荷されている。このような流れであるため「足踏み」製法は規模縮小しつつも、衛生面からビニールを用いて生地を保護した上で、今日においても根強く行われている。また、生地に十分な粘りを生み出しながらそれを延ばす方法として「すかし打ち」という讃岐うどん独自の高度な技法がある。
小麦粉
香川県産のうどんの原料となる小麦粉は、かつて稲の裏作として盛んに栽培されていた県内産の小麦(地粉)が使われていた。最盛期の栽培面積は10,000ヘクタール以上にも及んだが、高度経済成長期に急減して1973年には326ヘクタールとなった。その後は栽培の振興施策などもあって1987年に4,130ヘクタールまで回復したが、1997年には475ヘクタールまで再び減少している。
1970年代には粘りの強いカナダ産とさらさらしたアメリカ産の小麦をブレンドして主に使っていたが、現在は多くがオーストラリア産であり、日本のうどん用に最適化して開発された『Australian Standard White』(略称:ASW)という麺用中力粉が用いられることが多い。県産のうどん用小麦としてはもともと農林26号などが使われ、20世紀末にはASWに対抗するため県が『さぬきの夢2000』を開発したが、生産量の少なさ、製麺の難しさ、2004年に起こったJA香川県による不当表示問題などによるブランドイメージの低迷、などにより普及はあまり進まなかった。
一方でオーストラリア産の小麦とさぬきの夢2000をブレンドした讃岐うどん用の小麦粉なども開発され、これを使用した半生うどん「幽玄 premium」がモンドセレクションの金賞を受賞している。また「さぬきの夢2000こだわり店」の認証も行われており、さぬきの夢2000を100%使用した店名も明示されている。これは、「めん」「だし」「サービス」の三つを厳しく審査するものである。
だし
麺の食感という讃岐うどん共通の価値観を除けば、味付けなどは非常にバリエーションに富んでいるが、讃岐うどんを特徴付けるものとしてはほかに、イリコ(煮干し)のだしが挙げられる。香川では、近隣の伊吹島がイリコの名産地であることなどからイリコを使った濃厚なだしが昔からよく使われ、讃岐うどんの主張の強い麺と豊富な食べ方のバリエーションを下支えしてきた。イリコのだしは一般的な日本料理では煮物や味噌汁などに用いられるが、それはイリコが青魚独特の臭みを持つため、二番出汁相当の使われ方をするものだからである。うどんつゆのような「表の味」には鰹節・昆布によって調製される一番出汁が用いられることが多い。しかし、繊細な一番出汁では、讃岐うどんの「強さ」に負けかねない事もあり、讃岐うどんでは地元のイリコと北海道産の昆布を組み合わせてだしを作ってきた。煮干しの臭みを取るためには、焼いた鉄の棒をだしに入れる方法などが採られ、最後に加える醤油にも生臭さを消す効用がある。なお、つけ汁には濃口醤油、かけ汁には薄口醤油を使い、それぞれの分量を変えるなどの工夫がされている。
種物や麺つゆをたっぷりつけることさえ無粋とされうる蕎麦とは対照的に、様々な天ぷらが好んで乗せられ、時にはコロッケまで崩し入れられるような讃岐うどん文化には、イリコだしが欠かせない。また、香川ではうま味調味料が忌憚なく使われる傾向にあり、店の食卓調味料として味の素が置かれていることも多い。出来立てのうどんに味の素をパッと振って醤油をチャッとかけてすすり込むのはポピュラーな食べ方である。まただし醤油などもよく使われている。
薬味
薬味にショウガやネギが多用されるのも讃岐うどんの特徴であるが、これもイリコだしと相性がよい。なお、一番出汁に香りの強い香辛料を加えると風味が損なわれるが、イリコだしとショウガの組み合わせはかえって臭みが消えて爽やかな風味がうどんを引き立てる。
このほかにも唐辛子やからし、すりゴマ、花がつおが従来から用いられてきた。近年では食品の地域性も薄れて入手性もよくなり、さらに多様な薬味が供されている。他県のうどんやそばと同様、七味唐辛子、山葵なども定番であり、イリコや様々なふしを混合した新たな味も次々生まれている。また讃岐うどんが県外に進出するとともに、かけだしにショウガも広まっている。「おろしうどん」など冷たいうどんにはレモンを用いる店もある。

讃岐うどんに関する問題点

水質汚染
讃岐うどんのゆで汁を起因とする水質環境汚染が近年問題視されているため、香川県は解決に向けて取り組みを行っている。
香川県は下水道の普及率が2000年代後半でも60%と整備が遅れている。讃岐うどん店の大多数は零細企業に該当するため排水規制がかからず、下水道の無い地域では高濃度のデンプン質を多く含むうどんのゆで汁が、浄化装置を通さずに店舗近くの水路や川に直接放水されていることが多く、川底にうどんの切れ端が重なり合って沈んでいたり、ゆで汁に含まれる澱粉が沈殿したりなどの要因で、香川県一般の飲食店などの中でも最悪の環境汚染状態であり、環境汚染が懸念されている。讃岐うどんブームに伴い排出量が大幅に増加し、小規模の店でも毎日トン単位の水を大量に消費していることから、環境に対する影響も悪臭などが発生したことで苦情が寄せられるほどになった。県では県下のうどん店に、うどん店排水処理対策マニュアルなどの配布を行ったが、小規模事業者が抱える設備資金負担の問題もあり大きな改善が見られなかった。そこで次の段階として、小規模店舗にも設置しやすいうどん排水処理装置の開発、規制と共に罰則を想定した条例施行に向けた動き、など解決に向けた取り組みが行われている。
迷惑駐車
讃岐うどん店舗が用意する駐車場が少ない場合やまったく無い場合もあり、自動車で訪れる一部の客がその店舗周辺地域で迷惑駐車を行い、近隣住民の迷惑やトラブルとなるケースも存在する。
一例として、高松市内の某製麺所はブーム以前から有名だったが、ブームの発生で近隣にあるスーパーマーケットの駐車場への無断駐車が増加し、同店の客が駐車できない事態が発生したことから、ついに同市の別の場所に移転するという事態まで発生した。

参考文献等

作成にあたっては、Wikipediaを参考にしてます。